ETLツールを比較検討するための5つのポイント

ETLツールの導入に興味はあるものの、ツールをどのように比較検討すれば良いのか分からないという企業様は多いのではないでしょうか。

DX(Digital transformation)の時代にデータを活用し、経営判断に活かすことは非常に重要です。しかし詳細なデータを分析するには、社内で各部門やシステムが独立化し、連携ができない状態の(サイロ化した)データを集約し整備する必要があり、一から開発するには膨大なコストと開発工数がかかることはご存じの通りかと思います。

そんな工程を短期間かつ低コストで実現できるETLツールに興味を持つのは当然のことですが、一口にETLツールといっても様々な製品が存在します。

そこで本記事では、数あるETLツールのどのような点に考慮して比較し選べば良いのか解説していきます。ETLツールの導入を検討している企業様は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

関連記事:[初心者向け3分解説] ETLとは何か: 3つのポイントから理解する

目次

そもそもETLツールとは何か

そもそもETLツールはどのようなツールなのでしょうか。ETLツールの基本機能について簡単に説明していきます。

ETLツールの基本機能は3つ

ETLツールとは、

  • Extract: データを抽出する
  • Transform: データを加工・変換する
  • Load: データを格納する

の3つの機能があるツールを指します。

ETLツールは大量のデータを、DBやシステム、SaaS等から取得し、格納先のデータ方式に合わせて加工・変換するといった作業を簡易化してくれ、データ分析を行う前のデータの整備を自動化できます。データ集約の工程では、GUIによる作業が基本となるため、専門知識を持ったエンジニアを社内で抱える必要がないというのが大きなメリットです。

使用用途としては様々です。以上に利用例をいくつか紹介します。

  • 営業活動で集めたデータを一元管理して、今後のマーケティング戦略や経営判断に役立てるためにETLツールを使用
  • 複数のチャネルから獲得した個人情報を、顧客統合DBに入れる前に必要な変換を行うためにETLツールを利用
  • ゲームの利用状況データを抽出し、すぐに分析を行える状態にするためにETLツールを利用
  • 会社合併時に、いずれかのDBに顧客情報を片寄せするため、大規模な変換を実施するためにETLツールを利用

ETLツール導入で実現できること

ETLツールを使用すれば、社内外に点在するデータを、手軽に一か所に集約することが可能です。

異なるシステム間でのデータを連携して整備できるため、データ分析に基づいた業務改善や経営判断を行う材料として使用する企業が増えています。

高度な技術や専門的な知識を必要とせず、導入コストを下げられるということで、今やデータ分析業務を行う上で必要不可欠なツールとなっています。

EAIツールとは違い、ETLはバッチ形式のデータ処理に向いており、例えば顧客、販売、勤怠といった、大容量のデータ集約に使用されます。

関連記事:
【用語集】EAI(Enterprise Application Integration)

例えば以下のような、Salesforceにデータを集約して管理するケースにおいても、ETLツールを利用することでデータの管理が非常に楽になります。

基幹DB、MA、SFA、CRM、名刺、勤怠管理、労務、PJ管理といったデータはそれぞれ独立したシステムやアプリケーションで管理しているケースが多いかと思います。それらのデータを、ETLツールを使ってSalesforceに自動的に集約し管理することで、「営業効率の向上」「顧客満足度の向上」「LTV(ライフタイムバリュー)の向上」「業務プロセスの改善」といった導入効果が見込めます。

関連記事:
Salesforceに顧客データを集約させて営業効率を上げる

ETLツールを選ぶうえで見るべき5つのポイント

ETLツールを選ぶ際、多くの方は機能面で比較しようとされます。しかし、既存のETLツールに関しては基本的にできることはほぼ同じで、機能的に大きな違いはありません。

ETLツールの導入はあくまでビジネスの成長スピードを上げること、そしてデータに基づいた経営判断ができるようにすることが目的です。ETLツールを使って、「ストレス無くデータ分析ができる環境を構築」し、「使いこなす」ことが最も大切だという事を念頭に置き、製品を選んでいけると良いでしょう。

以下、製品を選ぶ際に必要な5つのポイントについて説明していきます。

導入コスト

いくらデータ分析の為の基盤が作れるとはいえ、費用対効果に合わない投資はできません。ETLツールを使用する場合は付随するサービス(BIツールやDWH等)の予算も考慮して導入を検討しましょう。

データ転送量による課金、稼働時間による課金、もしくはアダプタ使用量による課金方式かなどは、ツールによって異なるので自社のデータ転送の状況に合わせて最善のものを選ぶと良いでしょう。

またETLツールには大きく2種類「買い切り型(クラウドネイティブでない製品)」「月額型(クラウドネイティブ)」があります。

月額型のクラウドネイティブであればイニシャルコストを抑え、キャッシュフロー面でも融通がききます。さらに導入後でも製品に不満が出てきた際にすぐに解約できるため、金銭的なリスクも低いためおすすめです。

専門知識を必要としないか

ETLツールは専門性が不要だというのがメリットとして挙げられますが、中にはSQLやDBの知識を有することを前提に作られているものも存在します。できるだけ簡易的に扱うことができ、属人化しにくいETLツールを選びましょう。「接続コネクタの種類や数」や「連携先のテンプレートの有無」なども、導入基準として見ると良いでしょう。

GUIが洗練されているか

GUI上でワークフローを作成できるのがETLツールの魅力ですが、中にはGUIが使いづらい製品も存在します。GUIが洗練されていて直感的に使えるのか?という観点で選ぶのも大切な選定要素のひとつです。導入前に無料トライアル期間を設けているツールがほとんどですので、そのタイミングでしっかり見極めることをおすすめします。

特に、海外製ETLツールは英語表記でわかりづらい、日本向けに作られておらず扱いにくいという面もあります。できるだけ日本語対応の製品を選ぶのも運用していくうえで大切になります。

技術的なサポートの有無

ETLツールは容易にデータの集約ができるとはいえ、初期設計・開発段階では悩むことも多いため、なるべく運用サポートが手厚い製品を選ぶと良いでしょう。その点を考慮すれば、海外製品よりも国内製品の導入のほうが断然おすすめです。

ETLツールは導入前にトライアル期間が設けられているものが多いため、そのタイミングでどれだけ寄り添ってサポートしてくれるのかを見ておくと良いでしょう。いくらツールが使いやすかったとしても、質問の返答に毎回時間がかかるツール業者は避けたほうが良いでしょう。

SaaSへの対応

まだまだ自社でサーバを所持する企業も多く存在するものの、近年はSaaS系サービスを使用する企業が増えてきました。そのため、自社で使用しているSaaS系サービスのコネクタが標準装備されているかも確認すべきポイントです。

現状使用しているサービスは勿論のこと、今後導入する可能性のあるSaaS系サービスに対応しているのかも確認しておくと良いでしょう。導入工数に大きく影響する点なので、事前の確認が必須です。

ETLツール導入のデメリットや注意点

ETLツールを導入することで、データの集約およびデータ活用が行えるようになることは大きなメリットですが、もちろん状況によってはデメリットとして捉える点や注意すべき点もあります。

事前に確認しておくことで、ETLツールを導入すべきか否かの判断ができると思いますので見ておきましょう。

解決したい課題の洗い出しに時間がかかる

「なんとなくETLツールを導入したものの、活用できずに使うのを辞めてしまった」というケースは意外と多いです。

これは「課題に対してETLツールを使って解決する」という思考が抜け落ちてしまい、「ETLツールを導入すること」が目的になってしまった結果だと考えられます。

ETLツールを導入しただけで適切なデータ活用ができるわけではありません。まずはどのようなデータをどのような形式で扱えばうまくデータを活用できるのか考えることが大切です。ETLの使用頻度や分析内容、活用方法は勿論のこと、細かいフォーマットまで整理しておくと良いでしょう。

ETLツールを導入する際は、このような工程に対してしっかりと時間をかけて考える必要があります。導入に関してはある程度の時間がかかるということを見積もっておくと良いでしょう。

関連記事:
DX推進のための体制整備【データ活用・データ分析】

社内データの理解と導入後の整合性確認が必須

ETLツールの使用に関しては専門スキルはそこまで必要ないと言われていますが、社内データを集約し活用する以上、社内データの全体像を理解し、ETLツールの活用のために質の高いデータを整えておくこと(データクレンジング)は必須です。各システムのデータの理解に富んでいるメンバーを招集し、定期的にすり合わせ作業を行う必要があります。

また、ETLツール導入後は定期的にデータの整合性の確認を行う必要もあるため、一時的に作業量が増えてしまうことがあります。ETLツールの活用は短期的な目線で捉えず、この先数年、どれだけ効率的に業務が回るかを考えて利用する意識が必要です。

「DataOps」を実現できるETLを選ぶ

DataOpsとETL

ETLは、単に組織内のデータを抽出・加工・出力するにとどまらず、将来的な「DataOps」に向けたデータ基盤の整備という意味合いもあります。

「DataOps」とは、組織内でのデータ活用の場面において、業務・データ管理を扱うユーザーを編成し、データ開発者と密にコミュニケーションをとりながらアジャイル開発を進め、組織が目指すデータ活用を実現する手法です。この手法については、2010年代中盤に提唱され、以後広がりを見せています。

DataOpsを支える思想やテクノロジーについては、アジャイル開発、DevOps、自動化、機械学習、ビッグデータ、データサイエンス、ETL、クラウドなどがあります。この中でもETLは、DataOpsを実践するうえで中核となるテクノロジーです。

その理由は、「データ品質」「データフォーマット」といった点で課題を抱えたままでは、DataOpsは決して実現しないためです。信頼できないデータを処理するために自動化や機械学習を導入したところで、問題の解決には至らないためです。

ここで注意が必要なのは、ETLの中にも「DataOpsの基盤となり得るETL」と、「DataOps基盤となるのは難しいETL」があるという点です。

ここでは、判別するためのポイントを5つお伝えします。

データ量の増減に対応できる

ETLに求められているのは、「大量のデータを正しく処理する」ことに加えて、「急激なデータ量の増減にも対応する」という点です。

例えば、「年で最も販売が増加する、クリスマスキャンペーン」などで、大量のビッグデータが流れ込んできた際には、それを処理するだけのキャパシティが必要となります。逆に、データ量が平常程度の月には、ピーク時ほどのキャパシティは不要となります。

ピーク時に合わせて環境をあらかじめ準備し、それを通年利用し続ける場合、ピーク時以外では過剰キャパシティとなり、コスト的に大きな無駄が生じます。よって、「データ量の増減に対応できる」ETL、具体的には「クラウド上で稼働」「柔軟な課金体系」である製品を選択すべきです。

豊富な接続先に対応する

ETL製品として、あらかじめ多くのSaaSやIaaSへの接続に対応しているかは重要です。ETL製品の中には、接続テンプレートが準備されておらず、接続先を1つ追加するごとに多額の費用が必要となる製品もあります。

このような製品を導入した場合、接続先を追加するごとに、そして接続先の仕様が変更されるごとに費用が発生します。また、開発が完了するまではデータ処理が行えないため、結果として多くの待ち時間および機会損失が生じます。

こうしたリスクを避けるため、あらかじめ多数の接続先が提供されており、接続先ごとの追加費用がかからないものを選択すべきです。

ビジネスユーザーも利用できるUI/UXが提供されている

DataOps環境を整備するために、情報システム部門やデータサイエンティストが割ける時間は限られています。例えば、営業部から「月次会議に使うXXというデータを、来月からYYという形で出力したい」といった細かな要望まで随時対応していると、早晩リソース不足に陥ります。

これを避けるためには、「中核となるデータの処理は情報システム部門やデータサイエンティストが実施」するが、「各部門で必要となるデータは、各部門が自由にアクセスして処理」できるような仕組みが必要です。

これを実現するために。データ処理について詳しい知識のない人でも操作できるUI/UXが必要となります。

現在日本においてDataOpsを実践している組織は少ないです。しかし、アメリカで話題となったIT領域の方法論が、アメリカの数年遅れで日本に流行してきたことを考えると、日本においてDataOpsも大きな広がりを見せる可能性があります。

多くのデータ変換に対応している

ETLツールから提供されるデータ変換の種類が少ない場合、ユーザーのデータ変換ニーズに応えるため、情報システム部門が特定のデータ処理のためにプログラムを作成し、そのプログラムを継続してメンテナンスする必要が生じます。

アジャイルや自動化が中核となるDataOpsの理想から考えると、「特定のデータを処理するためだけに、独自プログラムを作成・メンテナンス」することは、理想から最も離れた工数のかかる対応となってしまいます。

よって、検討するETLが必要なデータ処理セットを網羅しているかどうか、テストを通じて検証すべきです。

将来的な自動化に対応する

DevOpsの思想をシステムインフラ面において実践するSRE(サイト リライアビリティ エンジニアリング)では、インフラに対する操作をできるだけコード化、自動化することが必要です。

DevOpsの思想を引き継ぎ、データ領域において実践するDataOpsにおいても、自動化は重要なテーマです。検討するETLは、「単なるデータ変換の自動化」に留まる製品なのか、それとも「広義のDataOpsと連動して動作する自動化」までを網羅する製品なのかを確認すべきです。

なお、現時点でDataOpsを見据えた実装が済んでいない製品でも、製品の思想やコンセプトを確認することで、ETL製品ごとの違いが見えてきます。

最後に:まずはプロに相談することが大切

ETLツールの基本的な機能と選ぶ際のポイントについて説明してきました。「ETLツールができること」として大きな違いはそこまでは無いものの、GUIやサポート体制、費用面などが選定基準になるかと思います。

もちろん導入に踏み切る前に、

「ETLツールの導入は本当に必要なのか?」

「やりたいことが本当に実現できるのか?」

などを今一度考えておく必要ががあります。また、ETLツール導入プロジェクトに際してDevOpsで進めることは可能か、可能な場合はそのプロジェクトをどれぐらいの規模で、どの期間・予算内で進めていくかに関しても検討する必要があります。

また、データ活用が経営戦略の意思決定の上で重要な位置づけとなる場合、経営層・マネジメント層とETLツール活用の理解を得ることや合意を得ることが重要となることがあります。

導入を検討する前に、迷ったらまずはETLのプロに相談することをおすすめします。弊社でも資料請求や導入の相談を受けておりますので、気軽にご連絡ください。

当社のETLツールである「Reckoner(レコナー)」は、GUIからの直観的な操作を実現し、プログラミング知識なくETLを利用できます。14日間無料トライアルをご提供しておりますので、ぜひご活用ください。

ETLツールについて詳しく知りたい、ETLツールの選び方を知りたいという方はこちらの「ETLツールとは?選び方やメリットを解説」をぜひご覧ください。

ブログ一覧へ戻る