Salesforce連携とは?基本・連携方法・選び方まで徹底解説ガイド

Salesforceを導入したものの、「基幹システムや他のSaaSとのデータ連携がうまくいかず、結局Excelでの手作業が残ってしまった」と頭を抱えていませんか?
DX推進の現場では、「API開発、ETLツール、iPaaS……選択肢が多すぎて、自社に最適な方法がわからない」「コストと開発工数のバランスを見誤って失敗したくない」という切実な声を多く耳にします。データ連携は一度構築すると変更が難しいため、最初の「選択」がプロジェクトの成否を分けると言っても過言ではありません。
本記事では、総務省後援「ASPIC クラウドアワード」にて「サービス連携賞」を受賞したデータ連携プラットフォーム『Reckoner(レコナー)』の視点から、Salesforce連携における主要な4つの方法を徹底比較します。
これまで多くのSalesforce連携を支援してきた知見をもとに、Salesforce連携におけるよくある失敗例と対策、ユースケース別の最適解まで、実践的なノウハウをご提供します。
この記事を読むことで、複雑な連携手法の違いを正しく理解し、自社の課題解決に最適な方法を具体的に判断できるようになります。
目次
- Salesforce連携とは?
- Salesforce連携の4つの方法を徹底比較
- 最適なSalesforce連携方法の選び方
- SalesforceとETLツール連携の事例
- SalesforceとETLツールを連携させるならReckoner
Salesforce連携とは?
Salesforce連携とは、Salesforceに蓄積された顧客情報や商談データを、会計ソフト、マーケティングツール、チャットツール、基幹システムといった「社内の他のシステム」とつなぎ、データを自動でやり取りできるようにする仕組みのことです。
例えば、「営業担当者がSalesforceで『受注』ボタンを押すと、自動的に請求書発行システムにデータが飛び、経理担当者が入力し直す必要がなくなる」といった状態を作るのが連携のイメージです。
なぜ今、外部連携が重視されているのか?
近年、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいますが、その最大の障壁となっているのが「データのサイロ化」です。 「営業はSalesforce」、「経理は会計システム」、「マーケティングはMAツール」といったように、部署ごとに異なるツールを使っているため、データがバラバラに分断されてしまっています。これでは、せっかくのデータを経営に活かすことができません。
Salesforce連携を行うことで、これらの分断されたシステムをつなぎ、「データが会社全体をスムーズに流れる状態(データパイプライン)」を作ることが可能になります。
連携によって実現できる3つの価値
Salesforceと外部システムを連携させることで、以下のメリットが生まれます。
1.業務効率化(脱・転記作業)
これまで人が手作業で行っていた「CSVのエクスポート・インポート」や「システム間のコピー&ペースト」が不要になります。入力ミスや二重登録の手間がゼロになり、社員は本来の業務に集中できます。
2.データ活用の高度化(顧客解像度の向上)
例えば、Salesforceの「商談データ」と、別システムの「製品利用ログ」や「問い合わせ履歴」を統合することで、顧客の状況を立体的(360度)に把握できるようになります。これにより、最適なタイミングでの提案やフォローが可能になります。
3.意思決定スピードの向上(リアルタイム経営)
各システムからデータを集めるために数日かけていた集計作業が自動化されます。経営層やマネージャーは、常に最新の数字が反映されたダッシュボードを見て、迅速な経営判断を下せるようになります。
※Salesforceに顧客データを集約に関する解説記事もあわせてお読みください。
参考記事:Salesforceに顧客データを集約させて営業効率を上げる
Salesforce連携が必要な理由
Salesforceは世界No.1のCRM(顧客管理システム)ですが、導入しただけで売上が上がる魔法のツールではありません。 Salesforceの真価を発揮させるためには、会計、在庫管理、マーケティングオートメーション(MA)、チャットツールなど、社内に点在するシステムと有機的につなぐ必要があります。
ここでは、なぜ今多くの企業がコストをかけてまで「外部連携」を急ぐのか、その背景にある3つの決定的な理由を、客観的なデータを交えて解説します。
1. 「データのサイロ化」による機会損失の防止
多くの企業では、部署ごとに最適なツールを導入した結果、システム間に壁ができ、データが分断される「サイロ化」が起きています。
- 営業部: Salesforce(商談状況)
- 経理部: 会計システム(請求・入金情報)
- マーケティング部: MAツール(Web行動履歴)
この状態では、営業担当者が「顧客の入金状況」や「Webサイトでの最新の動き」を知るために、わざわざ他部署に問い合わせる必要があります。連携によってこれらをSalesforce上で一元化できれば、顧客の状況を360度把握し、「最適なタイミングで、最適な提案」を行うことが可能になります。
2. 手作業による「データ品質の低下」と「人的コスト」の削減
システムが連携されていない場合、CSVでのデータ移行や手入力(コピー&ペースト)が発生しますが、ここには大きなリスクが潜んでいます。
- 人為的ミス(ヒューマンエラー)
人間による手作業では、どれだけ注意深く行っていても、入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーを避けることは困難です。Salesforceに誤ったデータが入れば、信頼性が損なわれ、誰も使わないシステムになってしまいます。 - 莫大な時間ロス
一般的に、データ担当者は業務時間の約80%を「データの検索や準備(加工・整形)」に費やしていると言われています。 連携を自動化することで、この「準備時間」をゼロにし、本来人間がやるべき「分析・戦略立案」に時間を割けるようになります。
3. 「リアルタイム経営」の実現
月次レポートを作成するために、月末に各システムからデータを集め、Excelで数日かけて集計していませんか? これでは、経営層が数字を見る頃には「過去のデータ」になっており、迅速な意思決定ができません。
Salesforceと基幹システムを連携させれば、売上速報や予実管理をダッシュボード上でリアルタイムに可視化できます。変化の激しい現代において、データに基づき即座に舵を切れる環境は、企業の競争力そのものになります。
Salesforce連携の4つの方法を徹底比較
Salesforceと外部システムを連携させる手段は、手動で行う基本的な方法から、高度なツールを用いた自動化まで多岐にわたります。 代表的な手法は、「Data Loade」「API」「ETL」「iPaaS」の4つです。
これらに「絶対的な正解」はありません。重要なのは、自社の「データ量」「更新頻度(リアルタイム性の必要有無)」「社内エンジニアのリソース」「予算」といった要件に合わせて、最適な手段を選ぶことです。
まずは、各手法の全体像と特徴を以下の比較表で掴んでおきましょう。
| 連携手法 | 初期コスト | 運用コスト | リアルタイム性 | エンジニア要否 | メリット | デメリット | おすすめ用途 |
| 1. Data Loader | 低 (無料) | 高 (人的工数) | × (手動) | 不要 (一部知識要) | ・無料で利用可能。 ・Salesforce公式ツールのため安心。 ・導入ハードルが低い。 | ・毎回手作業が発生(CSV出力・取込)。 ・人為的ミス(誤入力・重複)のリスク大。 ・自動化できない。 | 初期のデータ移行、 頻度の低いスポットでのデータ更新。 |
| 2. API連携 | 高 (開発費) | 高 (保守費) | ◎ (即時) | 必須 (高度な知識) | ・自由度が無限大。 ・システム間でデータを即座に同期可能。 ・複雑な仕様にも対応。 | ・開発期間が長く、コストが高い。 ・仕様変更時の改修が大変。 ・属人化しやすい。 | ECサイトの在庫連動など、 秒単位の同期が必須な重要業務。 |
| 3. ETLツール | 中 | 中(固定ライセンス費) | ○ (定期実行) | 不要 (ノーコード) | ・大量データの高速処理・加工が得意。 ・GUI操作で設定・保守が容易。 ・データ品質を担保できる。 | ・秒単位のトリガー実行は苦手な場合がある。 (一定間隔のバッチ処理が主) | 基幹システムとの日次同期、 分析用データの作成、 複雑なデータ変換・クレンジング。 |
| 4. iPaaS | 中〜高 | 低〜中 (従量課金多) | ◎ (トリガー) | 必要 (ノーコード) | ・複数のSaaS間をまたぐフロー構築が得意。 ・「AしたらBする」等のイベント駆動に対応。 | ・データ量が多いとコストが高騰しやすい。 ・複雑なデータ加工には不向き。 ・API制限に注意が必要。 | チャット通知(Slack/Teams)、 単票データのリアルタイム同期。 |
次項より、それぞれの連携方法について、具体的な仕組みや「どのような企業に向いているか」を詳しく解説していきます。
方法①:Data Loaderによるファイル連携
まず紹介するのは、Salesforceが公式に提供している無料のクライアントツール「Data Loader(データローダ)」を使った連携です。 これは、Salesforceとパソコン上のファイル(CSV形式)の間で、データの「入り」「出」を行うための最も基本的なツールです。
概要と仕組み
Data Loaderは、Excelなどで作成したCSVファイルを読み込んでSalesforceに一括登録したり、逆にSalesforce上のデータをCSVとして一括出力したりすることができます。 一度に扱えるデータ量は最大500万件までと多く、ブラウザ上のインポートウィザード(5万件まで)よりも強力です。
「GUI版」と「コマンドライン版」の違い
Data Loaderには、使い方が異なる2つのモードがあります。
GUI版(画面操作モード)
パソコンの画面上で「ボタン」をクリックしながら操作するモードです。「Insert(挿入)」ボタンを押して、ファイルを選んで…といった手順で進めるため、直感的で初心者でも扱いやすいのが特徴です。ただし、毎回手作業で実行する必要があります。
コマンドライン版(文字入力モード)
WindowsやMacの画面(コマンドプロンプト/ターミナル)に命令文を打ち込んで実行するモードです。設定は難しいですが、一度設定してしまえば、人間が操作しなくても裏側で処理を動かすことができます。
バッチ処理による自動化のハードル
「毎回手作業でCSVを入れるのは大変だから、自動化したい」と考える場合、コマンドライン版を使って「バッチ処理(一連の処理をまとめて実行すること)」を組む必要があります。
具体的には、以下の手順が必要です。
①マッピングファイルの作成
「CSVのA列」を「Salesforceの顧客名」に入れる、といった対応関係を定義するファイル(SDLファイル)を作成する。
②設定ファイルの記述
接続情報や処理内容を記述した設定ファイル(XML)をコードで記述する。
③タスクスケジューラへの登録
Windowsの機能などを使い、「毎日夜中1時にこの処理を実行せよ」と指示する。
このように、Data Loaderでの自動化はプログラミングに近い知識が必要となり、エンジニアがいない環境では導入のハードルが一気に高くなります。
| 特徴 | 内容 |
| メリット | ・無料で利用できる(Salesforceのライセンスに含まれる)。 ・公式ツールなので安心感がある。 ・大量データ(500万件)に対応している。 |
| デメリット | ・GUI版は完全手動のため、作業忘れやミスが起きやすい。 ・自動化(コマンドライン版)には高いITスキルが必要。 ・PCにインストールが必要なため、そのPCが起動していないと動かない(サーバーを用意する必要がある)。 |
この方法が向いている企業
- コストをかけずに、まずは手動でデータ連携を始めたい。
- データの更新頻度が低く(週1回など)、手作業でも運用が回る。
- 社内にサーバー構築やスクリプト記述ができるエンジニアがいる。
方法②:APIによるリアルタイム連携
次にご紹介するのは、Salesforceが公開している「API(Application Programming Interface)」を利用し、エンジニアがプログラムコードを書いてシステム同士を直接つなぐ方法です。いわゆる「スクラッチ開発」による連携です。
Salesforce APIの主な種類と使い分け
一口にAPIと言っても、Salesforceには用途に応じて複数のAPIが用意されています。これらを適切に使い分けるには、高度な技術的知見が必要です。
REST API【一般的】
Webサービスやスマホアプリとの連携に最適。軽量で扱いやすく、現在の主流です。少量のデータを頻繁にやり取りするのに向いています。
SOAP API【堅牢】
基幹システムなど、厳格なセキュリティや形式が求められるサーバー間通信で使用されます。古くからある規格で、大規模システム向けです。
Bulk API【大量データ】
数十万〜数百万件のデータを一括で処理するためのAPIです。通常のAPIで大量データを送るとエラーになるため、ETLツールなどは裏側でこれを使用しています。
Streaming API【即時通知】
「データが更新された瞬間」に通知を受け取るためのAPIです。チャットツールへのリアルタイム通知などに使われます。
メリット:最強の柔軟性とリアルタイム性
API連携の最大のメリットは、「できないことがほぼない」という自由度の高さです。 「Aシステムで受注確定ボタンが押されたら、瞬時にSalesforceの在庫を減らし、かつ配送システムに出荷指示を出す」といった複雑な業務ロジックも、コードを書けば1秒以下のタイムラグ(リアルタイム)で実現可能です。
デメリット:開発コスト、属人化リスクと「ガバナ制限」の壁
一方で、この手法には大きなリスクとコストが伴います。
高額な開発・保守コスト
専門のエンジニアを確保し、ゼロから設計・開発を行うため、初期費用だけで数百万〜数千万円規模になることも珍しくありません。また、Salesforceの仕様変更(年3回のアップデート)に合わせて、継続的なメンテナンスが必要です。
属人化(ブラックボックス化)のリスク
「書いた本人しかコードの中身が分からない」という状況になりがちです。担当エンジニアが退職すると、誰も手が出せない「開かずのシステム」となり、改修が不可能になるリスクがあります。
ガバナ制限(APIコール数制限)
Salesforceには「24時間に××回までしかAPIを呼び出せない」という厳しい制限(ガバナ制限)があります。設計が甘いと、月末の繁忙期に突然連携が停止し、業務がストップする事故に繋がります。
この方法が向いている企業
- 秒単位のリアルタイム連携がビジネス上どうしても必要である(ECサイトの在庫連動など)。
- 予算が潤沢にあり、社内に高度なSalesforceエンジニアチームを抱えている。
- 既存のツールでは実現できない、極めて特殊で複雑な業務フローがある。

方法③:ETLツールによる効率的なデータ連携
3つ目は、「ETLツール」と呼ばれるデータ連携専用のソフトウェアを使用する方法です。 これは、Data Loaderのような「手軽さ」と、API開発のような「高度な処理」のいいとこ取りをした、最もバランスの取れた手法と言えます。Reckonerもこのカテゴリに属します。
ETLとは?Salesforce連携における役割
ETLは、以下の3つのプロセスの頭文字を取ったものです。
- E (Extract – 抽出): Salesforceや基幹システムからデータを取り出す。
- T (Transform – 加工): データを使いやすい形に整形・変換する(結合、計算、クレンジングなど)。
- L (Load – 格納): 連携先のシステムにデータを書き込む。
単にデータを右から左へ移すだけでなく、「システム間で異なるデータの形式を、自動で整えてから渡す」という翻訳者のような役割を果たします。
メリット1:ノーコードで「複雑な加工」を自動化
ETLツールの最大の強みは、プログラミング不要(ノーコード)で高度な連携フローを構築できる点です。
例えば、「Salesforceの『取引先名』と、基幹システムの『売上データ』を顧客IDで紐付け、今月の購入額を計算してSalesforceに戻す」といった複雑な処理も、画面上でアイコンをドラッグ&ドロップして線で繋ぐだけで完成します。 API開発なら数週間かかる処理が、ETLツールなら数時間で実装可能です。
メリット2:大量データのバッチ処理に強い
ETLツールは、数万〜数百万件といった大量のデータをまとめて処理(バッチ処理)することを得意としています。 API開発で大量データを扱う場合、Salesforceの「ガバナ制限(通信回数制限)」を回避するための複雑な設計が必要ですが、ETLツールは裏側で自動的に最適な通信方法(Bulk APIなど)を選択してくれるため、ユーザーは制限を気にする必要がありません。
| 特徴 | 内容 |
| メリット | ・ノーコードのため、非エンジニア(DX担当者)でも設定・変更が可能。 ・大量データの高速処理が得意。 ・複雑なデータ加工(結合・演算・変換)が容易。 ・開発コストを大幅に削減できる。 |
| デメリット | ・「ボタンを押した瞬間に同期」といった秒単位のリアルタイム処理は苦手な場合が多い(1時間ごと、1日1回などの定期実行が基本)。 ・ツール利用料(サブスクリプション費用)が発生する。 |
この方法が向いている企業
- エンジニアのリソースが不足しており、現場主導で連携を進めたい。
- 基幹システムとSalesforceの間で、毎日大量のデータ(売上、在庫、商品マスタなど)を同期させたい。
- 分析のために複数のシステムデータを統合・加工したい。
※Salesforceに顧客データを集約に関する解説記事もあわせてお読みください。
参考記事:SalesforceユーザーがETLを利用する5つのシナリオ

方法④:iPaaS(Integration Platform as a Service)による統合連携
最後にご紹介するのは、近年のSaaS普及に伴い急速に利用が拡大している「iPaaS(アイパース)」です。 これは、クラウド上に散らばる複数のSaaS(Salesforce、 Slack、 Gmail、 会計freeeなど)を、一つのプラットフォーム上で横断的に繋ぐ「ハブ(中継地点)」としての役割を果たします。
クラウド時代の「デジタルな接着剤」
iPaaSは、「Aで何かが起きたら、Bをする」という「ワークフロー(処理の流れ)」を自動化することに特化しています。
例えば、「Salesforceで商談が成立したら(トリガー)、Slackの営業チャンネルに通知し(アクション1)、同時に契約書作成クラウドでドラフトを発行する(アクション2)」といった、複数のアプリをまたぐ業務フローを、プログラミングなしで構築できます。
特徴:リアルタイム性とノーコードの両立
iPaaSの最大の特徴は、API開発のような「リアルタイム連携」を、ETLツールのような「ノーコード(画面操作)」で実現できる点です。
- リアルタイム連携(イベント駆動)
データの更新を検知して即座に連携するため、チャット通知やメール送信など、スピードが求められる業務に最適です。 - バッチ処理も対応可能
スケジュール設定により、「毎週月曜日に実行」といった定期処理も設定可能です。(ただし、後述するコスト面に注意が必要です)
| 特徴 | 内容 |
| メリット | ・SaaS間の連携コネクタが豊富で、ログインするだけで繋がる。 ・「通知」や「単票データの同期」など、業務フローの自動化が得意。 ・リアルタイム性が高い。 |
| デメリット | ・従量課金(タスク数課金)が一般的で、データ量が増えるとコストが上がりやすい。 ・複雑なデータ加工(大量データの集計・変換)は機能的に苦手な場合が多い。 ・SalesforceのAPIコール数を大量に消費するリスクがある。 |
ETLツールとの決定的な違い
よくETLツールと比較されますが、使い分けのポイントは「データの量」と「目的」です。
ETLツール
「大量のデータ」を「分析・集計」するためにまとめて運ぶ。(例:全顧客データの夜間同期)
iPaaS
「個別のデータ」を「業務フロー」に乗せてリアルタイムに運ぶ。(例:受注1件ごとの通知)
※iPaaS EAI ETLに関する解説記事もあわせてお読みください。
参考記事:iPaaS EAI ETL/ELT RPA それぞれの違いをユースケースごとに知り、適切なサービスを選ぶ
この方法が向いている企業
- Salesforceの情報をSlackやTeamsにリアルタイムで通知したい。
- SaaSを多数導入しており、それらをパズルのように組み合わせて業務を自動化したい。
- 扱うデータ量はそれほど多くなく、都度発生するトランザクション処理がメイン。
最適なSalesforce連携方法の選び方
4つの連携方法にはそれぞれ強みと弱みがありますが、「なんとなく流行っているからiPaaS」や「無料だからData Loader」といった選び方は危険です。 失敗しないためには、自社のプロジェクト要件を以下の4つの基準で評価し、論理的に選択する必要があります。
- 連携するデータの種類と量
- 連携の頻度とリアルタイム性
- 予算とランニングコスト
- 社内の技術リソースと保守性
最適な連携方法が見つかる「意思決定フローチャート」
以下の質問に答えて進むだけで、貴社の要件に合致する最適な連携手法が見つかります。
各項目の詳細な説明は次項に記載します。
Q1. 連携するデータの種類と量
扱うデータ量は「5万件以上」の大量データですか? または「データの結合・加工」が必要ですか?
- YES → Q3へ
- (大量データの場合、リアルタイム処理はリスクが高いため、まずはETLなどによる定期実行を検討すべきです)
- NO (データ移行や単純なスポット更新)→ Q2へ
- (データ量が少なければ、リアルタイム連携の選択肢も視野に入ります)
Q2. 連携の頻度とリアルタイム性
秒単位の「完全リアルタイム連携」が絶対に必要ですか? (例:ECサイトの在庫連動、Webサイトでの即時表示など)
- YES → Q4へ
- (リアルタイム性を実現するための技術リソースを確認します)
- NO (1時間毎や日次、夜間バッチでOK)→ Q3へ
- (リアルタイム性が不要なら、より安価で安定した方法を選べます)
Q3. 予算とランニングコスト
自動化のために、月額数万円〜の予算を確保できますか?
- YES → 「ETLツール(Reckoner等)」が最適
- (大量データをガバナ制限を回避して高速処理。複雑なデータ変換もノーコードで自動化できます)
- ※少量データでも安定稼働させたい場合はこちらが推奨です。
- NO → 「Data Loader」が最適
- (まずはコストをかけず、手動または簡易的なバッチ処理で対応しましょう)
Q4. 社内の技術リソースと保守性
社内にSalesforce開発ができる高度なエンジニアチームがあり、保守体制も万全ですか?
- YES → 「APIスクラッチ開発」が最適
- (自由度が最大。高コストですが独自の複雑な要件を自社リソースで制御できます)
- NO → 「iPaaS」が最適
- (エンジニア不在でも、ノーコードでイベント駆動型のリアルタイム連携を実現できます)
選択基準①:連携するデータの種類と量
連携方法を選ぶ上で、最初に確認すべき物理的な制約が「データの量」と「種類」です。 Salesforceにはシステムを守るために「ガバナ制限(Governor Limits)」という厳格な利用制限が設けられており、データ量が一定を超えると、標準的なAPI連携やiPaaSでは処理が停止したり、追加コストが発生したりする可能性があります。
以下に、Salesforceコミュニティの定説や、Reckonerが数多くの実装現場で培った経験に基づく「データ量ごとの最適な連携手法」の目安を提示します。
【目安】データ量から見る推奨連携メソッド
- 〜5,000件(小規模)
- 推奨:Data Loader(手動)
- Excelで管理できるレベルの件数です。頻度が低ければ、コストをかけずに手動でインポート/エクスポートするのが最も合理的です。
- 5,000〜50,000件(中規模)
- 推奨:Data Loader(CLIバッチ) / iPaaS
- 手作業ではミスや待ち時間が許容できなくなるラインです。Data Loaderのコマンドライン機能を使って自動化するか、iPaaSでの連携が視野に入ります。ただし、iPaaSの場合は従量課金コストに注意が必要です。
- 50,000〜100万件(大規模)
- 推奨:ETLツール / Bulk API
- 標準のAPI(REST/SOAP)では処理がタイムアウトしたり、APIコール数の上限に達したりする危険領域です。Salesforceの「Bulk API(大量データ処理専用の通信)」を使用する必要がありますが、これをスクラッチ開発で実装するのは困難です。最初からBulk APIに対応しているETLツールの利用が最も安全です。
- 100万件以上(超大規模)
- 推奨:ETLツール(Reckonerなど)
- 数百万件のトランザクションデータやログデータを扱う領域です。この規模になると、単なる連携だけでなく、処理速度(パフォーマンス)や、連携途中で止まった場合のリカバリ機能が必須となります。大量データ処理に特化したアーキテクチャを持つETLツール以外での運用は、リスクが極めて高くなります。
選択基準②:連携の頻度とリアルタイム性
「データ連携」と聞くと、多くの担当者が「データが更新されたら、即座に反映される(リアルタイム)」状態を理想と考えがちです。しかし、全ての業務においてリアルタイム連携が必要なわけではありません。
むしろ、必要以上にリアルタイム性を追求することは、開発コストの高騰やシステムの不安定化(API制限超過など)を招く原因となります。 業務の目的(ビジネス要件)に合わせて、適切な「更新頻度」を見極めることが成功の鍵です。
3つの連携頻度と適したユースケース
連携の頻度は大きく分けて「リアルタイム(即時)」「マイクロバッチ(短時間隔)」「バッチ(定期)」の3つに分類されます。それぞれの特徴と、適している業務を見てみましょう。
1. リアルタイム連携(即時〜数秒)
- 特徴
- イベントが発生した瞬間にデータを同期します。
- 適した業務
- ECサイトの在庫連携: 「Salesforceで在庫引当をした瞬間に、Webサイトの在庫を減らす」など、タイムラグが機会損失やクレームに直結する場合。
- 顧客対応(CS): コールセンターで、顧客からの電話着信と同時に最新の購入履歴を表示させる場合。
- 推奨ツール
- APIスクラッチ開発、iPaaS
2. マイクロバッチ連携(数分〜1時間ごと)
- 特徴
- 5分〜1時間ごとに差分データをまとめて同期します。
- 適した業務
- 営業進捗の共有: 営業担当が入力した日報を、1時間ごとにSlackに通知するなど、「今日中に知りたい」レベルの情報共有。
- Webリードの取り込み: Webサイトからの資料請求データを、数十分以内にSalesforceのリード情報として登録する場合。
- 推奨ツール
- ETLツール(高頻度設定)、iPaaS
3. バッチ連携(日次・週次・月次)
- 特徴
- 夜間などの業務時間外に、大量のデータを一括で同期します。
- 適した業務
- 予実管理・経営分析: 「昨日の売上確定値」や「今月の経費合計」など、日々の締め処理が終わった後に確定するデータを可視化する場合。
- マスタ同期: 基幹システムの「商品マスタ」や「社員マスタ」など、頻繁に変更されないデータをSalesforceに反映する場合。
- 推奨ツール
- ETLツール(Reckoner)、Data Loader
「頻度」と「コスト」のトレードオフ
更新頻度を上げれば上げるほど、比例して「コスト」と「リスク」が高まるというトレードオフ(相関関係)が存在します。
APIコール数(ガバナ制限)の消費
Salesforceには「24時間あたりのAPI利用回数制限」があります。iPaaSなどで1件更新されるたびに通信を行っているとすぐに上限に達し、連携がストップしてしまうリスクがあります。
iPaaSの従量課金
多くのiPaaSは「タスク実行数」で課金されます。1万件のデータを1件ずつリアルタイム連携すれば、1万タスク分の料金が発生しますが、ETLツールで夜間に1回まとめて送れば、通信は1回(または数回)で済み、コストを劇的に抑えられます。
選択基準③:予算とランニングコスト
ツール選定において、多くの企業が「初期費用」や「月額ライセンス料」を最優先にしがちです。しかし、Salesforce連携において本当に重要なのは、運用後の人件費や保守費を含めたトータルコスト(TCO:Total Cost of Ownership)と、それに見合うROI(投資対効果)す。
一見安く見える方法が、実は最も高くつくこともあります。4つの手法のコスト構造を比較してみましょう。
| 連携手法 | 初期コスト(導入時) | 運用コスト(継続) | コストの性質と注意点 |
| Data Loader | ほぼ無料 | 高(人件費) | ツール代は0円ですが、毎回の作業者の人件費が発生します。ミスがあった場合のリカバリ工数も含めると、意外と高コストです。 |
| APIスクラッチ開発 | 高(数百万円〜) | 高(保守費) | 開発会社への外注費や社内エンジニアの工数がかかります。Salesforceの仕様変更に合わせた改修費用も継続的に発生します。 |
| ETLツール | 低〜中 | 固定(定額制多) | Reckoner等は月額固定のサブスクリプション型が一般的です。データ量が増えてもコストが予測しやすく、安定しています。 |
| iPaaS | 中 | 変動(従量課金) | 多くのiPaaSは「タスク実行数」による従量課金制です。データ量が増えるとコストが青天井になるリスクがあります。 |
「見えないコスト」に注意する
表面的な金額だけでなく、以下のような「隠れコスト」を考慮する必要があります。
例1.「無料」の罠(Data Loader)
「Data Loaderなら無料だから」と安易に選ぶと、担当者が毎月数時間をデータ作業に費やすことになります。その担当者の時給を計算すれば、月額数万円のツールを導入して自動化した方が、結果的に安いケースがほとんどです。
例2.従量課金の落とし穴(iPaaS)
初期はデータ量が少なく安価でも、ビジネスが成長してデータが10倍になったとき、請求額も10倍になる可能性があります。大量データを扱うなら、データ量に依存しない(または上限が高い)定額制のETLツールの方が長期的なコストメリットが出ます。
ROI(投資対効果)で判断する
最終的な判断は、「安さ」ではなく「ビジネス価値に見合っているか」で行う必要があります。
例1.API開発(数百万)の価値はあるか?
「在庫連動の遅れによる機会損失」がそれ以上の金額になるなら、投資する価値があります。
例2.ETLツールの価値はあるか?
導入することで「月20時間の作業削減」+「精度の高い予実管理による経営判断の向上」が得られるなら、月額費用は十分に回収できます。
SalesforceとETLツール連携の事例
ータ連携専門企業であるReckonerが支援した事例の中から、Salesforce連携によって劇的な業務改善を実現したケースをご紹介します。
多くの企業が抱える「Excelによる手作業地獄」や「開発リソース不足」といった課題を、ETLツールがどのように解決したのか、具体的なBefore/Afterを見ていきましょう。
キューアンドエー株式会社様の事例
Salesforceの「入力規則」の壁を突破し、データ連携を完全自動化
導入の目的
Salesforceへ正確なデータを自動で取り込み、手作業による転記コストを削減してデータ活用を加速させること。
導入前の課題
- Salesforce側に設定された厳格な「入力規則(バリデーション)」が障壁となり、外部システム(kintone)のデータをそのまま取り込めずエラーが多発していた。
- エラー回避のために、Salesforceへ取り込む前に手作業でのデータ加工・修正が発生し、データ反映にタイムラグが生じていた。
- RPAによる自動入力も検討したが、Salesforceの画面仕様変更への対応や保守性に不安が残っていた。
連携ワークフロー
Reckonerが外部データを取り込み、Salesforceが要求するデータ形式(日付フォーマットやコード値など)へ自動変換。
「Salesforceの入力規則」に準拠したクリーンなデータのみを、ReckonerがAPI経由でSalesforceへ自動書き込み。
連携の効果
- Salesforceへのデータ入力業務が完全自動化され、手作業工数がゼロになった。
- 入力規則に準拠した正確なデータが常に格納されるようになり、Salesforce上のデータ品質と信頼性が向上した。
- ノーコードで「データ変換ルール」を設定できるため、Salesforce管理者自身が連携フローを運用・保守できる体制が整った。
※インタビュー全文は以下からご覧いただけます
参考記事:キューアンドエー株式会社様導入事例インタビュー
株式会社NTTデータビジネスブレインズ様の事例
Salesforceへの契約データ入力を完全自動化し、工数90%削減を実現
導入の目的
Salesforce内の顧客・契約データを常に最新かつ正確な状態に保ち、サービス契約数の急増に耐えうる拡張性の高いデータ連携基盤を構築すること。
導入前の課題
- 契約管理システム(kintone)に蓄積されたデータをSalesforceへ反映させる手段がなく、膨大な件数を手作業で転記していた。
- Salesforce上のデータに誤りがあると請求などの後続業務に重大な影響が出るため、ダブルチェック体制が必要となり、業務負荷と心理的負担が限界に達していた。
- ヒューマンエラーによる転記ミスや漏れのリスクが常にあり、Salesforceのデータ品質が担保できていなかった。
連携ワークフロー
Reckonerがkintoneから契約情報を定期的に自動抽出し、Salesforce連携用のフォーマットへ変換。
人手を介することなく、ReckonerがSalesforceへ正確な契約データを自動で書き込むパイプラインを構築。
連携の効果
- Salesforceへのデータ入力業務が完全自動化され、作業工数が90%削減(月10日→1日)された。
- 転記ミスや漏れが根絶され、Salesforce上の情報の信頼性が向上したことで、後続業務も安心して遂行できるようになった。
- ダブルチェック体制が不要となり、担当者の心理的負担が大幅に軽減された。
※インタビュー全文は以下からご覧いただけます
参考記事:株式会社NTTデータビジネスブレインズ様導入事例インタビュー
株式会社阪神コンテンツリンク様の事例
kintoneからSalesforceへの二重入力を撤廃。データ精度向上とナレッジ共有を実現
導入の目的
Salesforceへのデータ入力負荷(二重入力)を解消し、常に最新かつ正確な顧客情報をSalesforce上で参照できる状態を作ること。
導入前の課題
- 顧客情報はExcel、案件管理はSalesforceと管理が分散しており、現場は「Excelに入力した後、Salesforceにも手入力する」という二重作業を強いられていた。
- 手作業による転記ミスや入力漏れが頻発し、Salesforce上のデータが正確でない(最新ではない)ため、システムとしての信頼性が低下していた。
- データ連携のタイムラグにより、営業担当者が最新のクライアント状況を即座に把握できなかった。
連携ワークフロー
Excel管理から移行した「kintone」内の顧客・案件データを、Reckonerが自動で抽出。
Salesforceが必要とする項目のみをマッピングし、自動でデータを流し込むパイプラインを構築。
連携の効果
- 「二重入力」が完全に撲滅され、営業現場の入力負荷と人的ミスが大幅に軽減された。
- Salesforceへデータが自動連携されることで、転記待ち時間がなくなり、営業担当者は常に最新かつ正確なクライアント状況をSalesforce上で把握できるようになった。
- データ基盤が整ったことで、属人化していた営業ナレッジを組織として活用できる体制が実現した。
※インタビュー全文は以下からご覧いただけます
参考記事:株式会社阪神コンテンツリンク様導入事例インタビュー
SalesforceとETLツールを連携させるならReckoner
本記事では、Salesforce連携の主要な4つの手法(Data Loader、API、iPaaS、ETL)を比較し、自社のデータ量やリソースに応じた最適な選び方を解説しました。
Salesforceのポテンシャルを最大限に引き出し、「手作業による工数肥大化」や「開発の属人化」といった課題を根本から解決するためには、専門知識なしで大量データを安全に処理できるノーコードETLツールの選定が鍵となります。
Reckonerは、Salesforce専用コネクタを標準搭載しており、ドラッグ&ドロップの直感操作だけで複雑なデータ連携フローを構築可能です。「自社の要件で連携できるか確認したい」「まずは無料で試してみたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。







