クラウド型ETL・オンプレミス型ETLの違いを徹底比較
ETLの主要な2種類(クラウド型、オンプレミス型)について詳しく解説します。それぞれの特徴を機能、費用感などの観点で比較しているので、ETLの導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
目次
ETLとはなにか
企業では、業務システムごとにデータが分散し、そのフォーマットも異なるケースが一般的です。例えば、CRM(顧客関係管理)システムには顧客情報、販売管理システムには売上情報、在庫管理システムには商品情報がそれぞれ格納されています。 しかも、日付の表記方法一つとってもシステムごとに異なっているなど、データ形式の不統一がしばしば発生します。
このような状況下では、全社的なデータ分析や経営判断を行う際に、必要なデータを収集・統合するのに多大な時間と労力がかかります。 ETLは、まさにこの問題を解決するための仕組みであり、データ活用基盤を構築する上で重要な役割を担います。
ETLとは「Extract (抽出)、Transform(変換・加工)、Load(格納)」の頭文字をとった言葉で、企業内に散在するデータを統合的に管理するための仕組みです。データの取得、取得したデータの変換や加工、変換・加工されたデータの格納といった一連の流れを提供しています。
1.抽出
まず、必要なデータをそれぞれの場所から取り出します。(例:営業部、顧客管理部、物流部にあるデータを集める)
2.変換・加工
次に、集めたデータを同じ形式に揃えます。バラバラの書き方を統一したり、不要なデータを取り除いたりします。(例:日付の書き方を「YYYY/MM/DD」に統一する、顧客住所の表記ゆれを修正する)
3.格納
最後に、きれいに整理されたデータを1つの場所にまとめて保存します。(例:データウェアハウスと呼ばれる大きなデータベースに保存する)
データ整形の例を挙げると、A社の売上データは「20241231」と日付が書かれているのに、B社の顧客データは「12/31/2024」と書かれていたとします。そのままでは使えないので、ETLを使ってどちらかの形式に統一します。
こうしてETLで整理されたデータは、様々なことに使えます。例えば、
- 全社の売上をまとめて分析する
- 顧客の属性ごとに購買傾向を調べる
- 今後の売上を予測する
など、データに基づいた的確な意思決定ができるようになります。
つまり、ETLはデータ活用の土台となる重要な仕組みなのです。
- 参考記事: データ活用で経営課題を解決するための4つの視点
ETLは主に2種類、それぞれの特徴を比較
ETLは主に、クラウド型とオンプレミス型の2種類に分けられます。
クラウド型
クラウド型ETLは、インターネット経由でアクセスし、データの抽出、変換、ロードといった一連のETL処理をクラウド上で行います。特徴は以下の通りです。
・低コスト
ハードウェアやソフトウェアの購入・管理が不要なため、初期投資や運用コストを大幅に削減できます。従量課金制のサービスが多いため、使った分だけ支払えるため、無駄がありません。
・迅速な導入
オンプレミス型のように複雑なインストールや設定作業が不要で、Webブラウザから簡単に利用開始できます。導入期間を短縮し、迅速にデータ活用を始められます。
・拡張性
クラウドの特性を活かし、データ量や処理量の増減に応じてリソースを柔軟に拡張・縮小できます。急激なデータ増加にも対応でき、常に最適なパフォーマンスを維持できます。
・メンテナンス不要
クラウドベンダーがインフラの運用・保守を担当するため、自社でメンテナンスを行う必要がありません。運用負荷を軽減し、本来の業務に集中できます。
・豊富な接続先
主要なクラウドサービスやデータベースとの連携が容易です。多様なデータソースからのデータ統合をスムーズに行えます。
・高度な機能
機械学習を活用したデータクレンジングやデータ変換など、高度な機能を備えたサービスも提供されています。データ活用の幅を広げ、より高度な分析を可能にします。
オンプレミス型
オンプレミス型ETLは、自社でサーバーやソフトウェアなどのインフラを保有・管理し、その上でETLツールを稼働させる方式です。クラウド型とは対照的に、全ての処理が自社の環境内で行われます。特徴は以下の通りです。
・高いセキュリティ
データを自社環境内で管理するため、セキュリティリスクを低減できます。特に金融機関や医療機関など、高度なセキュリティが求められる業種でメリットがあります。
・安定したパフォーマンス
インターネット回線に依存しないため、ネットワークの遅延や障害の影響を受けにくく、安定したパフォーマンスを維持できます。 大量のデータを高速に処理する必要がある場合に適しています。
・柔軟なカスタマイズ
自社環境に合わせて自由にカスタマイズできます。特殊な要件や複雑な処理にも柔軟に対応できます。
・既存システムとの連携
既に社内で運用しているオンプレミス型システムとの連携が容易な場合があります。既存のデータ基盤を活かしながらETLを導入できます。
ETL選定のポイント
ETLを選定する際には、クラウド型とオンプレミス型のどちらが自社に適しているかを見極める必要があります。
まず、両者のメリット・デメリットを比較してみましょう。
項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
コスト | 低コスト(従量課金制) | 高コスト(初期投資・運用コスト) |
拡張性 | 高い(柔軟なリソース拡張) | 低い(ハードウェア増設が必要) |
導入スピード | 速い(Webブラウザから利用可能) | 遅い(環境構築・インストールが必要) |
運用負荷 | 低い(ベンダーが管理) | 高い(自社で管理) |
セキュリティ | 注意が必要(クラウドベンダーへの依存) | 制御可能(自社環境で管理) |
パフォーマンス | インターネット回線に依存 | 安定性が高い |
カスタマイズ性 | 制限あり | 高い |
既存システム連携 | クラウドサービスとの連携が容易 | 既存のオンプレミス型システムとの連携が容易な場合もある |
これらの比較を踏まえ、ETL選定のポイントは以下の通りです。
1.予算
予算が限られている場合は、クラウド型が適しています。初期投資を抑え、使った分だけ支払う従量課金制なので、コスト効率良く運用できます。
2.導入スピード
迅速にETLを導入し、データ活用を始めたい場合は、クラウド型が有利です。導入期間が短く、すぐに利用開始できます。
3.既存システムとの連携
既存の社内システムとの連携が重要な場合は、それぞれのシステムとの接続の容易さを確認する必要があります。クラウド型はクラウドサービスとの連携に優れていますが、オンプレミス型の既存システムとは連携が難しい場合があります。逆に、オンプレミス型ETLツールの中には、特定のオンプレミスシステムとの連携に特化したものもあります。
4.将来的な拡張性
将来的なデータ増加やビジネスの変化に対応できるよう、拡張性の高いツールを選ぶことが重要です。データ量や処理量が将来的に増加する見込みがある場合は、クラウド型の柔軟な拡張性を考慮すべきです。
5.メンテナンス
社内に十分なIT人材がいない場合は、クラウド型がおすすめです。運用・保守をベンダーに任せられるため、自社での運用負荷を軽減できます。
6.データ量と処理量
扱うデータ量や処理量が大きく、パフォーマンスが重要な場合は、オンプレミス型が適しています。クラウド型の場合、インターネット回線の影響を受ける可能性があるため、安定したパフォーマンスを求めるならオンプレミス型が有利です。ただし、将来的にデータ量や処理量が大幅に増加する見込みがある場合は、クラウド型の拡張性の高さを考慮する必要があります。
7.データの機密性
高いセキュリティレベルが求められる機密データを扱う場合は、オンプレミス型を検討する必要があります。クラウド型でもセキュリティ対策は講じられていますが、自社で完全にコントロールできるオンプレミス型の方が安心です。
8.サポート体制
ツールの導入や運用において、ベンダーのサポート体制は重要な要素です。クラウド型、オンプレミス型共に、充実したサポート体制を提供しているベンダーを選択しましょう。
これらのポイントを考慮し、自社のビジネスニーズ、IT環境、予算などに合わせて最適なETLツールを選択することが重要です。 必要に応じて、複数のツールを比較検討し、実際に使い勝手を確認することも有効です。
クラウド型ETL「Reckoner」
ETLは企業で取り扱うデータの運用コストを低減し、データの信頼性向上につながるシステムです。データドリブンな組織を目指す企業にとって、欠かせないシステムとなるでしょう。当社が提供するクラウド型ETL「Reckoner」を利用すれば、データ活用基盤の構築を短期間・低コストで実現可能です。
Reckonerは、SaaSで提供されているため低コストで導入可能です。多数のデータベースやSaaSアプリケーションとの接続が可能で、シンプルなGUIによりノーコードですべてを完結できることも魅力的です。さらに、フルマネージドサービスでの運用となるため、運用工数がゼロとなります。
現在Reckonerでは無料トライアルを受け付けているため、今後ETLを新たに導入検討する企業はぜひご参考にしていただければ幸いです。
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