データ移行の戦略とベストプラクティス

データビジネス、データ活用が重要視されている中で、データ移行や統合のニーズが強まっています。データ活用のためには、データ分析に必要なデータを集約し、場合によってはオンプレミスからクラウドへの移行も必要です。

しかし、オンプレミスからクラウドへの移行を経験したことがない企業様も多いのではないでしょうか。本記事では、主にオンプレミスからクラウドへの移行に注目し、移行手順や戦略について解説します。

目次

データ移行とは?

データ移行とは、システムの刷新やデータベースの移行に伴い、格納しているデータ全てを移行することです。データ移行を行う状況としては、物理サーバの劣化やメモリ不足による移行、オンプレミスからクラウドへの移行、データ活用に際しての移行など様々です。

特に、最近ではビジネスを取り巻くアプリケーションのクラウド化により、多くの企業でオンプレミス環境からクラウド環境へのデータ移行が増えており、その需要の高さが伺えます。

次項からは特に需要の高い、オンプレミスからクラウドへのデータ移行について解説するのでご参考ください。

オンプレミスからクラウドへデータ移行する3つのメリット

オンプレミスからクラウドへデータ移行すると、以下3つのメリットを得られます。

  • 運用管理の工数の削減
  • スケーラビリティ
  • 固定費用の削減

それぞれのメリットを解説しましょう。

運用管理の工数の削減

クラウドの活用は、自社の運用管理の工数を削減できます。

オンプレミスの場合、サーバーの管理をするのは自社の担当者です。サーバーの管理とは、OSのアップデート、ソフトウェアのアップデート、システムのアップデートに伴う各種ミドルウェアのバージョンアップなどさまざまです。これらのバージョンアップ対応は、業務への影響を考えながら進めければならないため、担当者に大きな負担がかかるでしょう。

一方でクラウド上でデータ管理を行う場合、データ管理を行うSaaS(Software as a Service)利用であれば、サーバーの管理の一切が不要となります。

スケーラビリティ

オンプレミスの場合は、トランザクションが増加した際に、スケーラビリティ増強に物理的なハードウェアを追加する必要があります。クラウドの場合は、管理コンソール上から簡単にリソース追加が行えるという点がメリットとなります。また、利用するクラウド基盤やプランによっては、リソースが不足した際に、自動的に追加が行われる機能も提供されています。下記の記事でも、スケーラビリティのメリットを解説しているので是非ご覧ください。

費用の削減

オンプレミスの場合、サーバーの調達費用や環境構築を自社で実施しなければならないため、購入費用や作業コストが発生します。

しかし、クラウドはインターネット上のリソースを活用して構築できるため、ハードウェアの調達費用や構築のコストを削減できるでしょう。また、クラウドは利用料金に応じて料金が決まる従量課金制を採用しているケースが多いため、必要以上に費用をかけずに利用でき

る点でも費用の削減に繋がります。

注意しなければいけないのは、クラウド移行によりコストが増加するケースがある点です。どのクラウドベンダーの、どのサービスプランを利用するかを十分に考慮しなければなりません。

例えば、AWS, Azure, Google Cloudの3大クラウドでは、いずれも「非常に高頻度かつ多数のアクセスが発生するデータ」「年に一度以下しか利用されないデータ(アーカイブ)」「その中間」といった具合で、複数の料金プランがあり、料金も10倍以上異なります。これらを組み合わせて、コストの削減を考慮するのがよいでしょう。

データ移行の手順

ここからは、オンプレミスからクラウドへのデータ移行手順を解説します。データ移行の手順は、以下の通りです。

  • 事前調査
  • データ移行の準備
  • テスト移行の実施
  • データ移行の実施

それぞれの手順を解説しましょう。

【事前調査】データソースや実機の精査

事前調査では、以下の作業が必要です。

  • ゴール設定
  • データソースの調査
  • 移行対象の選定
  • 実機調査

ゴール設定は、データ移行の目的ならびに優先順位の設定が重要となります。例えば、「高頻度にアクセスが発生するデータのレスポンス改善」が目的なのか、「アーカイブデータのコスト削減」が目的なのかでは、アプローチが全く異なります。

次に、データソースの調査とは、クラウドへの移行が必要となるシステムやデータ対象の明確化です。移行期間、コスト、社内リソースなどを考慮すると、「全てをクラウドにデータ移行することは最善」とはならないケースもあります。その場合、どの部分は移行し、どの部分は移行しない(または次の移行フェーズまで待つ)などの判断が必要です。

その後は、洗い出したデータソースをもとに移行対象を選定します。移行対象の選定時は、システムの一部か全部なのか、システム同士の関係性が強いときにはどのような手順で移行するのか、などを考慮しましょう。

例えば、オンプレミスのMicrosoft SQL Serverがある場合、「クラウド上でSQL Serverを稼働させる」のが最も容易な移行方法です。しかし、長期的なコストやパフォーマンスを考えると、例えば「Amazon Auroraに移行させることが、コストとパフォーマンスの両面で最適」といった判断もあるはずです。最終的には、プロジェクトのスケジュールや工数、コストなどから総合的な判断が必要です。

最後は、移行対象のシステムやデータの状態を確認するために、実機での調査をおこないます。実機調査では、移行対象となるシステムの調査を行います。ここでは、対象のシステムやデータの状態を確認し、本当に移行が問題なく実施できるかの最終判断を行います。

【データ移行の準備】データ移行の計画立て

データ移行は、事前に計画を立てておくことが大切です。計画を立てることで、データ移行に必要なタスクを洗い出せるため、当日に失敗するリスクを減らせます。

まずは、クラウドへの移行手段を決めましょう。オンプレミスからクラウドへの移行時は、社内LANからインターネット環境への接続が発生するため、社内のネットワーク環境を事前に確認しておく必要があります。例えば、プロキシサーバを設置している場合はクラウド側でプロキシサーバからの通信を許可したり、データ移行用に新たな接続口を用意したりなどです。また、データ移行戦略は「ビッグバン」と「トリクルダウン」の考え方が活用されます。

ビッグバンとは、事前に関係するシステム等を全て停止し、決められた期間内でデータ移行を完了させることです。データ移行を一気に実行するため、完了するまでの期間は短いでしょう。しかし、失敗時には全システムに影響するため、できる限り綿密な計画を立てなければなりません。

トリクルダウンとは、データ移行を段階的に実施する手法です。古いシステムと新しいシステムを並行稼働しながら進めるため、ビジネスの停止が必要ありません。しかし、複雑な設計が求められるため、専門的なスキルが求められます。

また、データの変換が必要となった場合、ETLツールを活用してデータを一元的な変換を行う場合もあります。ETLツールについては、下記の記事で解説しているのでご参考ください。

続いて、データ移行計画を作成します。規模にもよりますが、大規模なデータ移行は一大プロジェクトとなります。コスト、スケジュール、手順、移行方法、役割分担、バックアップ、移行ツール、データ変換、既存環境への影響、ダウンタイムなど、あらゆる角度で計画を行います。最も避けなければならないのは「既存環境でダウンタイムが生じ、ビジネスに影響が発生した」「データが消失し復元できない」の2点です。

最後は、データガバナンスを設置します。データガバナンスとは、企業内のデータ管理規則のことです。データガバナンスの重要性は、以下の記事で解説しているのでご覧ください。

【テスト移行の実施】

本番環境と全く同じテスト用の環境を準備し、移行テストを実施します。テストの実施により、本番移行前の問題発見ならびに回避策の立案に役立ちます。

【データ移行の実施】

最後は、いよいよ本番環境へのデータ移行です。

データ移行の当日は、以下の点に注意しましょう。

  • 連絡体制を明確にする
  • 切り戻しが可能な状態にしておく
  • リソースの確保

本番当日は、関係者間の連絡体制を構築しておく必要があります。もし、当日に何らかのトラブルが発生したら、影響を受ける担当者に素早く連絡しなければなりません。トラブルによっては、部内へ周知する必要性も出てくるため、できる限り素早い対応が求められます。

また、トラブルの復旧に時間がかかりそうなときは、前の状態に切り戻す判断も必要です。切り戻すタイミングが遅くなってしまうと、翌日以降の業務に影響が出てしまうため、切り戻しの手順を事前に確認し、どのタイミングで実施するかの基準も定めておきましょう。

移行本番は、予想していないトラブルが発生し、予定よりも大幅に工数がかかってしまうケースも多く見られます。こうしたトラブルに対応するためにも、人員の確保をしておくとよいでしょう。

データ移行は弊社「3shake」にお任せください

今回は、オンプレミスからクラウドへのデータ移行の手順や戦略を解説しました。

オンプレミスは、クラウドと比べて運用コストが発生し、柔軟なスペック変更もできないため、できる限りクラウドへの移行が推奨されます。

しかし、オンプレミスからクラウドへのデータ移行は、手順の策定や関係者への周知など、失敗なく終えるためにはさまざまな作業が必要となるでしょう。

弊社3shakeは、データ統合基盤の戦略策定から運用までを総合的に支援しています。もちろん、オンプレミスからクラウドへのデータ移行も支援しているため、データ基盤の構築を考えている企業様は、ぜひ3shakeまでご相談ください。

また、ETLツールについて詳しく知りたい、ETLツールの選び方を知りたいという方はこちらの「ETLツールとは?選び方やメリットを解説」をぜひご覧ください。

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