導入企業紹介
会計バンク株式会社は、1955年に創業した会計事務所を母体とする、ソリマチグループから生まれたフィンテックベンチャーです。個人事業主向けのサービスとして、確定申告やインボイスをスマートフォン一つで完結するアプリケーション「スマホ会計FinFin」「スマホインボイスFinFin」を提供しています。
データベース上の顧客情報をSalesforceに移行・連携するに当たり、作業に要するエンジニアの人件費を抑える方法を模索。ノーコード型ETLツール「Reckoner」を導入し、作業工数とエンジニアの人数を大幅に削減することに成功しました。今後の構想として、連携するデータの種類を増やし、顧客一人ひとりに最適化した対応を目指しています。
Reckonerを導入した感想や今後の展望などについて、会計バンク株式会社 執行役員 五十嵐 武彦(いがらし たけひこ)様及びソリマチ株式会社 主任技師 玉川 大貴(たまがわ だいき)さんにお話を伺いました。
課題と導入効果
課 題
- データベース上の顧客情報をSalesforce に移行・連携する方法を検討する中で、エンジニアの人件費が課題となっていた。データを移す作業にエンジニアが張り付くと多額のコストがかかるため、エンジニアの手を極力使わずに済む仕組みづくりが必要だった
効 果
- データ連携に必要な作業工数とエンジニアの人数を大幅に削減できた
- 非エンジニアだけで完結できる操作が多いため、タイムリーに施策を実行できるようになった
- 将来的には、問い合わせやFAQの閲覧内容など顧客に関する様々な情報をSalesforceに集約し、より個々の顧客に合わせた対応が可能となる見込み
求めていたのは、エンジニアの人件費をかけずにデータ連携を実現する方法
――はじめに、御社の事業内容を教えてください。
五十嵐:会計バンク株式会社はソリマチグループから生まれたフィンテックベンチャーです。個人事業主向けの2つのアプリケーション「スマホ会計FinFin」「スマホインボイスFinFin」を提供しています。
――ご自身はどのような役割を担っていますか?
五十嵐:私は執行役員なので担当業務は多岐にわたりますが、主な役割はFinFinのアーキテクチャの設計です。もちろん、細かいところの作り込みは私ではなく社内の優秀なエンジニアが行っています。
玉川:FinFinを利用するお客様の情報は、CRMプラットフォームのSalesforce 上で管理しています。2022年12月のリリースに先立ち、FinFinのアプリケーション(データベース)からSalesforce にどのようにデータを移行するか検討し、実装しました。また、移行したデータの運用部分も私が担当しています。
――Reckonerの導入前にどのような課題がありましたか。
五十嵐:FinFinのデータをSalesforce に連携するに当たり、コスト面、特にエンジニアの人件費が課題になっていました。データを移す作業にエンジニアが張り付くと多額の人件費が生じてしまいます。「自社のエンジニアを極力使わないでデータ連携を実現したい」と考えていました。
――Reckonerを導入することにした経緯・理由を教えてください。
五十嵐:データ連携についてSalesforceコンサルタントの方に相談したところ、いくつかの選択肢を提案され、その中にReckonerがありました。自社での開発も含めて提案いただきましたが、Reckonerならほぼノーコードで構築できるということで、当社のニーズに一番フィットしました。
特にすごいと思ったのは、Salesforce と接続する部分にプログラミングが不要なことですね。あとは、現時点では活用していませんが、AWS(Amazon Web Services)のインフラに直接接続できることにも魅力を感じました。
玉川:できるだけリアルタイムに近い形でデータを移行したいと考える中、当社が希望する動きに最もマッチしたのがReckonerでした。
実際の導入に際しても、質問に対するレスポンスがとても速く、「選んで良かった」と思える対応をしてもらいました。
本来なら膨大な作業が必要なデータ連携を、短期間で簡単に完了
――どのようなプロセスでReckonerを導入しましたか?
玉川:当初は、データベースエンジンのMariaDBから直接Salesforce にデータを移行する方法を想定していました。しかし、当社のセキュリティ上それが難しいと判断し、2段階に分けて導入を進めました。
まず、CSV取り込みにより手動でデータをSalesforce に投入しました。この作業にかかったのは約2週間。その後、データを自動で連携するためのWeb APIを開発し、Reckoner でワークフローを構築しました。API側の開発には時間がかかりましたが、Reckonerの導入は短期間で完了しました。ワークフローの作成には1週間もかかりませんでしたね。
――具体的に、どのようなワークフローを構築したか教えてください。
玉川:FinFinの利用者情報は全てリアルタイムでMariaDBに登録されます。そのMariaDBからデータを収集するWeb APIを構築し、このWeb APIをReckonerが実行して、データを積み上げて加工を施した上で、Salesforce に登録するという流れになっています。
五十嵐:過去に他の事業において、ユーザーのデータを基幹システムに移す作業に関わったことがありますが、めちゃくちゃ大変でした。「どうにかしてその大変さを楽にしたい」と考えてつくったのが今回の仕組みです。その結果、本来はすごく大変なはずのデータ連携が、今回は意外と簡単にできたなと感じています。
――Reckonerにより構築した仕組みを、現在どのように活用していますか?
五十嵐:顧客管理はもちろんですが、特に活用しているのはメールの送信です。FinFinでアカウントを登録していただいたお客様のデータをSalesforce に連携して、登録へのお礼メールをSalesforce から自動で配信する仕組みにしています。
登録へのお礼メールの他に、セミナーや新しい機能を案内するメールも配信しています。前者はカスタマーサクセスの部隊が担当し、後者はマーケティング部隊が担当しています。お客様に対して今までどういうアクションを行ってきたのか、両方の部隊が見られる状況になっています。
――実際に使ってみて、Reckonerの性能やサービスの品質についてどう感じましたか?
玉川:率直な感想として、とても分かりやすかったです。導入に際して、データベース上にあるインプットのデータをアウトプット側のSalesforce にどのように渡すか、どのように加工するかに苦慮していました。データベースには不要なデータも入っていますが、Reckonerの中で直感的に、うまく変換してデータ同士を結合することができます。大変使いやすく重宝しています。
スリーシェイクの対応もスムーズで、いつも助かっています。「こういう機能はありますか」と質問したら、後日その機能がリリースされたと案内が来たこともあります。具体的には、「ワークフローの前回実行日時をワークフロー内で取得することができるか」という質問でした。「この関数を使えば取得できるようになりました」と案内してもらったので、今後はより使いやすいワークフローを作れそうです。
五十嵐:自分達が何もしなくても機能が増えていくのは、すごく嬉しいなと思いますね。「スリーシェイクならしっかり機能のアップデートをしてくれるだろう」という期待感を強く持っています。
作業の工数だけではなく、関わるエンジニアの人数自体を削減できた
――Reckonerの導入により、どのような効果・変化がありましたか?
五十嵐:工数だけではなく、エンジニアの人数そのものを大きく減らすことができました。設計エンジニアがいなくても簡単にワークフローを構築できるし、Reckoner自体がシステムとして完成しているため途中の細かいテストも省略できる。システムを改変するたびに運用エンジニアに依頼しなくて済むことも大きなメリットだと感じています。
現時点では、非エンジニアがReckonerを直接活用する段階には至っていませんが、「ちょっとしたことにもReckonerを活用できそうだね」と社内で話しています。データの加工も、テスト環境と本番環境の切り替えも、Reckonerならエンジニアの手を借りずに簡単にできる。色々なことに活用していきたいです。
――Reckonerの仕組みが社内に浸透すれば、様々な部署・職種で活用が広がりそうですね。
五十嵐:そうですね。「これをやりたいからここからデータを持ってくる」といったことを、各部署が自分達でできるようになると思います。Reckonerの中で、自分達だけで完結できることが結構多いなと。Reckonerでなければ、例えばマーケティング部隊がこれをやりたいと言っても、開発部隊が3か月待ってくれと言えばその間ずっと施策を打てません。Reckonerがうまく浸透していけば、時機を逃さずにやりたい施策を実行できるようになると考えています。
より多くの情報をSalesforceに集約し、顧客一人ひとりのニーズに応えていく
――今後どのようにReckonerを活用していくか、展望をお聞かせください。
五十嵐:直近では、Zendesk(クラウド型カスタマーサービスプラットフォーム)上にあるお客様とのやり取りの情報を、Reckonerを使ってSalesforce に連携させようと構想しています。実現すれば、既に連携済みの顧客情報と、その顧客がどのような問い合わせをしてきたかといった情報がSalesforce に集約されます。
Zendesk上には、誰がどのFAQを見たかの情報も保有しています。この情報も含めてSalesforce に連携すれば、例えば特定のFAQを見ているユーザーに対してのみ関連コンテンツを案内するメールを配信することもできます。逆に、その人にとって不要な案内をしないことも可能です。
「今、お客様が何に困って、どういう状態にあるのか」。データをうまく活用しながら、個々のお客様に合わせた対応を追求していきます。
――最後に、スリーシェイクやReckonerに今後期待することがあればお聞かせください。
五十嵐:まずは、我々がReckonerを継続的に使えるように、しっかり稼いでいただけたら。これからReckonerのユーザーが増加しても、速度面などのサービスレベルが落ちないようにしてもらえたら嬉しいですね。今のところ全く不満はありませんが、今後もぜひ安定した運営をお願いします。
玉川:スリーシェイクのすごいところは、日々様々なサービスの改良や新サービスの提供をしているところです。新しいものが提供されると、「これを使ってこういうことをしてみたいな」というアイデアが浮かんできます。我々の脳内のブラッシュアップのためにも、ぜひ今後も新しい機能を追加してもらえれば嬉しいです。
written by 三谷 恵里佳